第37章 話題
みわっちの呼び掛けが功を奏し、遂に学校側は、数日後から異例の学校内立ち入り規制をかけた。
特別、用がない人間に関しては実質立ち入り禁止のようなもの。
守衛さんは対応に追われて大変そうだが、効果覿面で、部の皆もオレも安心した。
バスケ部というだけで、海常の制服を着ているというだけでオレの連絡先を聞かれたり、と他の生徒にも被害が出ていたからだ。
学校内での安全はある程度確保できたけど、帰宅は慎重に。
通学路で待ちぶせしているような女が一定数いるからな……。
その執念には驚きを隠せない。
一度でいいから、こちらの気持ちになって考えてみて欲しい。
まあ、帰ればみわっちと一緒の時間が過ごせるし。我慢っスね。
しかし、困ったことに、プライベートは失われてしまった。
分かりやすい面で言うと、例えば……買い物が外で出来ない。
いや、気にせずすればいいのかもしんないんスけど……いちいち買う物全部チェックされてるというのは気分がいいものではない。
みわっちが気を遣って、買い物は全て済ませてくれている。
みわっちと行くスーパーも、たまの外食も楽しみのひとつだったのに。
こんな状態は一時的なものと分かってはいるけれど、少しずつ、小さなストレスが蓄積しているのを感じる。
最近になって、頭痛が治まらなくなった。
「黄瀬くん、眉間にシワ。体調悪い……?」
柔らかい指が眉間に触れる。
その感触に少しホッとした。
どうしてみわっちはこんなに柔らかいんだろう。
みわっちはいつも、寝る前にマッサージをしてくれる。
専属トレーナーのようで、超贅沢。
彼女だって疲れてるのに。
そんな貴重なリラックスタイムなのに、頭痛が邪魔をしてきて……。
「ん、ちょっと頭痛いっス……」
「熱は……ない、かな。頭痛薬持ってくるね。我慢するのよくないよ」
パタパタとリビングに向かうみわっち。
はぁ……なかなか落ち着く日々が来ないっスねえ……。
薬を飲んで横たわると、みわっちが頭を撫でてくれる。
冷蔵庫から持って来てくれた冷却シートのおかげで、額がひんやり冷たい。
「……ストレス溜まってるでしょう」
優しい声に癒されるんスわ。
ほんとに。