第35章 こんな日常
「みわっちって……毎日勉強してすげーっスよね……」
食後はいつも、勉強の時間にしている。
部屋よりも、リビングでする方が好きだ。
「そう? この時間にやらないとすーぐ眠くなっちゃって」
「オレ……テスト3日前とかに焦り始めるから手遅れになるんスかね」
「そうだね……根本はスポーツと変わらないと思うんだ。試合の3日前にいきなり練習始めても、勝てないでしょう?」
「……そう言われると……そうっスね。ん、オレも、この時間一緒に勉強するっス」
こうして、食後の少しの時間は毎日ぷち勉強会が行われることになった。
ダラダラはやらない。
時間を決めて、集中してやる。
「よし、今日はここまで」
「……疲れたっス……」
黄瀬くんはグッタリと机の上に突っ伏した。
「ふふ、お疲れさま。黄瀬くん、先にお風呂入って来ていいよ?」
「みわっち、先に入りなよ」
「私ちょっと片付けてからにするから、お先にどうぞ」
「そっスか? じゃあ、お言葉に甘えて」
黄瀬くんがリビングから出て行くと、しばしの間沈黙が訪れる。
お皿を洗いながら、不思議な感覚にとらわれていた。
ひとりで暮らしている時には、こんな事になるなんて考えつきもしなかった。
……自分に大切な人が出来るなんて。
それはとてもとても胸を温かくする感覚だった。
誰とも距離を置いて、自分すら信じられなくて真っ暗だった日々。
キラキラ輝いている黄瀬くん。
力強く引っ張ってくれるあき。
大好き。
「みわっち、お風呂アリガト。みわっちも入んなよ」
黄瀬くんがリビングに戻ってくる。
「あ、うん入らせて貰うね……ってええ!?」
上半身裸のままの黄瀬くんに驚き、つい大きな声を出してしまった。
「ん? どしたんスか?」
「ちょっと、服、服」
「ああ、暑くてつい……にしたってそんな驚かなくても、普段、全部見てるじゃないっスか」
ぜ、全部って……
確かに、そうだけど……
でも、えっちの時はゆっくり裸見てる余裕なんてないもん……。
って、違う! そうじゃない!
「お、お風呂はいってくる……!」
「ハイハイ行ってらっしゃい」
クスクスと笑う黄瀬くんを背に、逃げるようにリビングを飛び出した。