第35章 こんな日常
目覚ましが鳴る少し前に目が覚めた。
黄瀬くんはまだ眠っている。
起こさないように彼の腕の中から抜け出した。
基本的には彼の方が目覚めるのが早いから、こうやって黄瀬くんの寝顔をゆっくり見れるのは珍しい。
……綺麗……お人形さんみたい。
こんな人に求められて……いるって、本当なのかな。
……裸であんなこと……
いけない。また妄想しそうになっちゃった。
欲求不満なのかな……恥ずかしすぎる。
キスして……いいかな……いいよね……彼女なんだもん……
…………
だめ。無理。無理無理。顔近すぎる。
近くまで顔を寄せて、耐えきれず離れる。
昨日まで一緒にお風呂入ってたとは思えないとか言われそうだけど、いつまで経っても慣れないものは慣れない。
事件も落ち着いて、今日からお風呂はひとりで入りますと宣言したのが昨日の夜。
黄瀬くんと入っていると、女の子のお手入れ的なものが何も出来ないのが気になってて、昨日申し出たんだ。
少し渋っていた黄瀬くんだったけど、モデルもやってる彼は、お手入れの重要さを分かっているから、すんなり頷いてくれた方だと思う。
たまには一緒に入りたいと泣きつかれてしまったけど……。
あれから、朝のランニングも再開した。
落ちた体力を戻さなきゃ。
黄瀬くんと一緒に出発して彼の方がかなり長いルートを走るのに、戻ってくるのは同じタイミング……いや、私の方が少し遅い。
"いつも"が、かえってきた。
黄瀬くんは朝練で思い切り汗を流して、1時間目が始まる前にはおにぎりをパクリ。
1、2時間目は頑張って起きていたけど、3時間目には机に突っ伏して寝ていた。
4時間目はうつらうつらとして過ごし、お昼休みにはお弁当を食べてお昼寝。
中間テストが近いというのに、午後の授業も半分以上は夢の世界だったよう。
部活の時間になった途端、目を輝かせて部室まで走っていく。相変わらずだなあ。
私もマネージャーとして部活に参加。
強豪校の体育館は今日も熱気に満ち溢れていた。
今日の夕飯は私の当番。
普段は和食しか作れないので、たまには洋食とかも作りたいと思うのだけど……まずメニューが思いつかず、やっぱり煮物を作る自分がいた。
ちゃんと、レシピサイトで勉強しよう……。