第6章 日常の変化
翌日、オレは無事に回復していた。
夜あんなだったから、絶望的だと思ってたのに。
熱は下がったし、後は少しだけ咳が残っている状態だった。
みわっちが、ずっと看病してくれたおかげだと思う。
間違いなく。
さすがに朝練はまだ行けなかったけど、これなら放課後の練習には問題なく出れそうだ。
みわっちと登校の準備をしてたら、姉ちゃんがひょっこりと顔を出した。
「涼太、あたし近くまで行く用あるけど、2人とも学校まで車乗せていってあげようか?」
「マジで? 助かる! ラッキ〜」
「あ、ありがとうございます!」
朝ごはんを食べて、みわっちが家族にバカ丁寧に挨拶をするのを見届けて、2人で姉ちゃんの車の後部座席に乗り込んだ。
「恐れ入ります……! よろしくお願いいたします!」
「はいは〜い、そんなに恐縮しなくていいよ〜」
出発して3人で他愛ない話をしながら談笑していると、しばらくして、隣のみわっちがこくんこくんと頭を揺らしている。
どうやろ眠気との戦いに巻き込まれているようだ。
「みわちゃん、寝てていいよ? まだ着くまでは時間かかるから」
はっと身体を起こし、慌てて返事するみわっち。
「はっ、いえ、し、失礼しました!」
「気にしなくていいのにい」
「いえ、送っていただいているのに……そんな失礼なこと……」
しばらくまた睡魔と戦っていたが、遂に負けてしまったようだ。
オレに、ぽすんと寄りかかってきた。
「みわっち、寝ちゃった。昨日ずっと看病してくれてたから、全然寝れてないのかも」
「えーやだ可愛い! 大事にしなさいよ〜?」
「うん」
大事に、する。
みわっちから「付き合う」って返事、まだもらえてないけど……
昨日、彼女がオレにしてくれたように、頭を撫でた。
「ふ〜ん、アンタがそんな優しいカオして……珍しくベタ惚れって感じ。
涼太が女の子連れてくるの初めてだけど、アンタ、なかなか見る目あるじゃない」
「でしょ? みわっち、いい子でしょ?」
「いい子過ぎて、ちょっと心配。……本当に、守ってあげなさいよ」
「……うん」
大事な子を、守る……か。
初めてだ、そんなの。
でも、素直に思う。
守ってあげたいって。