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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第34章 対峙


「それで……来てくれたんスね」

「ちょっと、場所が分からなくて戸惑ったんだけど……間に合って良かった」

……帰り際に刑事さんに言われた事。
彼のケアをしてあげて欲しい、と。

ナイフを持って向かってきたアイツ。

本物の殺気や凶器を向けられるというのは、刑事さんのようなプロでも、事件後に、PTSD……心的外傷後ストレス障害に悩まされる事も少なくないそうだ。

アイツの狂気を、殺気を、一身に受けた黄瀬くん。
恐怖を感じなかったわけがない。
その辛さは、私がよく分かっているはずだろう。

でも、ケアなんてそんなの、どうすればいいんだろう。

私はいつも黄瀬くんにして貰ってるばかりで、どうしたらいいかなんて想像もつかない。

黄瀬くんが、私の手を握り直した。
いつもは温かい手が、今日は冷たい。

「……みわっち、オレさ、ちょっと情けないこと言うけど……さっきから震えが、止まんないんスよ」

触れている手が、震えている。
手だけではない。身体も震えていることに気が付いた。

「黄瀬くん……」

「はは、なんなんスかね…コレ。安心したのか……さっきまではわかんねー事だらけだったから、混乱してて気づかなかったんスかね……」

どうしたらいいのか分からず、黄瀬くんの背中に腕を回した。

「も、もう大丈夫、だから……っ。だいじょうぶ……っ!」

「……みわっ……ち」

黄瀬くんらしくない、余裕のない抱擁。
加減ができずに、力一杯抱きしめられた。
息が苦しいくらいに。

今ここにいるのを証明するかのように、刻みつけるかのように、強く強く。

「……オレたち、生きて……るっスよね……」

「うん……生きてるよ」

生きている。
こんなにもその意味を考えたことはなかった。

私たちはまだ高校生で、壊れそうになっている心の保護方法なんて分からなかった。

強い抱擁はやがて熱い口づけとなり、お互いの衣服を剥ぎ取って交わった。

熱い彼自身がひたすら熱い私の中に突き立てられて、どちらも、獣のように喘いだ。

ふたりの吐息と身体は、味わった恐怖、今生きていること、愛する人がいること、この人と生きていきたいと思う気持ち。

様々な感情を孕んだまま繋がり、交わり、お互いの心を満たしていった。



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