第34章 対峙
「刑事さん……あの人はお父さんみたいなひとで、高校の入学の時も、おめでとうって連絡くれて。
私、拒絶反応で暫く高熱を出しちゃって学校行けなかったんだけど、その間も心配で様子見に来てくれた」
「……休んでたっスね」
懐かしい。やっと学校に行けると思ったら、あの痴漢事件に遭ったんだ。
黄瀬くんと、出会った日。
「うん……暫くして、黄瀬くんとお付き合いをするようになって、マネージャーをやるようになって……凄く喜んでくれた。あの時の私、本当にいつ自殺するかって感じだったって。
刑事さんにも同じ位の娘さんがいたから、気にしてくれていたんだって」
「……うん」
「で、今回のストーカー事件の時……もし犯人が、私と一緒にいる黄瀬くんを見て逆上して黄瀬くんを襲ったら……とか考えたら、いてもたってもいられなくて気付いたら泣きながら電話してた。黄瀬くんを守ってって」
「……みわっち」
「それで今日、黄瀬くんが私と別れた後、駅じゃない方向に向かったのを見て、確信して連絡したんだ。彼が私を守るために何かをしようとしてるって」
「……なんで、分かったんスか、ヤツとの待ち合わせ」
「……黄瀬くん、トレーニングパンツのポケットに入れっぱなしだったから……封筒。
洗濯する時に見つけたの。手紙はなかったけど、あの封筒は見間違えない」
「あっ……」
彼らしくない。
余程気が動転していたのか。
「聞こうと思ってたけど、なかなか言えなくて。黄瀬くんも、仕事ってウソついてたし、どうしたらいいのか分からなくて……」
嫌な予感はしてた。
「昨日、黄瀬くんと……した時にも、黄瀬くんに何か違和感を感じて。きっとあの時、犯されてる私の事を思い出してたんだね」
「……ち、ちが」
「ううん、変な意味で言ってるんじゃないの。
黄瀬くんが、私が気持ちよくなってる所を見たいって言ってくれた意味がやっと分かって。……いま思えば、2回目の……時も、ちょっとおかしかったし」
「……ごめん。そんな気持ちのままするもんじゃないって分かってるんスけど、どうしてもオレ……」
黄瀬くんの身体に力が入る。
責めたいんじゃない。
「いいの。黄瀬くんの気持ち、ぶつけて欲しいから……」
黄瀬くんの全部を、受け止めたいんだよ。本当に。