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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第34章 対峙


「あっつ……」

「みわっち、のぼせちゃったっスか? はい、コレ」

手渡された冷たいスポーツドリンクを喉に流し込むと、火照った頭と身体が少し冷えた。

「はあ……いきかえった……ありがとう」

どうしても離れがたく、長い時間の抱擁を堪能していたら逆上せてしまったみたい。

ベッドサイドのテーブルに空のグラスを置き、身体を横たえると呼吸が楽になった。

「……黄瀬くん、さっきの続き、話そうか?」

「ん、そっスね」

目を合わせて話したくない話題だ。
枕に顔を埋めた。

「私ね、昔……自殺しようとしたの」

「……え」

「アイツから…毎日、好きなようにされて絶望しかなかった。耐えても、もう一生幸せになんかなれないって。こんな汚れた女、生きてる価値ないって。……夜の公園で、手首を切ったの」

「……」

黄瀬くんが、言葉を選んでるのが分かる。
いきなりこんなこと話されたら、返答に困るだろう。

「家はもう、怖くて。でも、ひとりで遠くに行くこともできなくて、近所の公園。笑っちゃうでしょ? 包丁で手首を切って、水道出しっ放しにしてね、そのまま死のうと思ってたんだ。迷惑な話だよね」

沈黙。
気を遣って相槌を打たれるより全然いい。

「……たまたま、さっきの刑事さんが通りかかって。すぐに止血されて。事情を聞かれても私、言えなかったんだ。
恥ずかしい事をされているって、分かってはいたから。でも私、その日アイツに犯されたまま外に出たから、下半身が血だらけで」

今でも思い出す。刑事さんの驚いた顔。
怒りの表情。

「……毎回ね、乱暴にされると、すごい量の血がでるの……必死にあれこれ繕ったけど、すぐにバレちゃった。
刑事さんは、うちまで来て母に言うって。でもね、必死で止めたんだ。お母さんを傷付けたくないからやめてって」

手に力が入る。
握り締めた手のひらに、爪が食い込んでいる。

「……刑事さんは何かあったらすぐ言えって、名刺と個人携帯の連絡先を教えてくれて」

心臓が、軋むみたいだ。

「……私、ウソついたんだ。お母さんのためじゃない、自分がこれ以上傷つきたくなかったから止めただけ。あんな惨めな目に遭ってる事、誰にも知られたくなかった」

「……そんなの、当たり前っスよ」

大きな手に包まれて、強く握り締めた拳が、黄瀬くんの手でほどかれていく。


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