第34章 対峙
冷たいお茶を入れたグラスをふたつ、みわっちの前に置く。
会話はない。
置くや否や、グラスの外側に水滴が出来る前にふたりして飲み干してしまう。
空のグラスをそれぞれテーブルに置いた時、ふたつのグラスが、かちゃん、と音を立ててぶつかった。
その音を合図に、黙ったままふたりは抱き合った。
震えていたのは、オレか、彼女か。
キスをするでもなく、会話をするでもなく、ただただ、抱きしめた。
柔らかい髪を掴み、細い腰を抱き、香りを味わった。
身体に伝わる相手の体温を、ひたすら感じたかった。
「……みわっち」
『お風呂が、沸きました♪』
……軽快な給湯器からの音声と完全に被った。
ふたりで吹き出す。
「……お風呂、入ろうか」
みわっちがいつものように優しく微笑んでそう言った。