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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第34章 対峙


「黄瀬くん! ケガは!?」

「な、ないっスよ」

顔を上げると、みわっちの首筋に流れる血が目に入った。

「みわっちこそ!」

何か拭くものを……と思ったが、上半身は何も身につけていないため放り投げた鞄を探り、タオルを出した。

優しく血の跡を拭う。
出血自体は止まっているようだ。

「痛くないっスか」

「……うん……」

白い肌に赤い点が出来てしまっている。
今にも血が噴き出しそうな赤さ。


ヤツは警察の人間と何かを話しながら連れられていった。

「黄瀬くん、私たちも帰ろう。ゆっくり、説明するから……」



ふたり、帰路に着く。
震えるみわっちの肩を抱き、自分の無力さを噛み締めた。

オレは若干惚けていて、頭が混乱して何を話したらいいのか分からなかった。

「……オレ、仕事って言ったのに、どうして」

ゆっくり順を追って話をしようと思っていたのに、順序も何もなく、突然質問してしまう。

「自惚れかもしれないんだけど……黄瀬くんが、今この事件が起きているタイミングで"チラッと行ってくる"ような仕事を入れるのが、不自然すぎて」

「あー……そうっスよね……」

確かにそうだ。
ストーカー事件が起こっている今、よほど何かの事情がない限り、オレはモデルの仕事など受けないだろう。

うまいこと言えたと思ったんスけどね……。

「事務所にプレゼントを取りに行くって言ってた時もそうだった。黄瀬くん、明らかに表情が暗かったし、何かその中に目的があるんだろうって」

みわっちはオレの不自然さに全部気づいてたのか。

参った。




そうこうしているうちに、マンションに着いた。

上半身裸のオレと、シャツや下着を切り裂かれてボロボロのみわっち。
オレのシャツを上から羽織ってはいるけど。

こんなんでよく通報されなかったな……。

家に着くとふたりともホッとしたのか、空気が柔らかくなった。

「オレ……風呂沸かすね」

みわっちをリビングへ誘導し、自分はキッチンで風呂給湯器のスイッチを入れた。

軽快な電子音に、急に現実に戻ってきた感じがした。



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