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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第34章 対峙


ヤバい。コイツはマジでヤバい。
みわっちだけでも……。

「みわっち、後ろの柵を越えられる? オレ、後から行くっスから」

「や、やだ、何言ってるの……」

ヤツから目は離せない。
顔は確認できないけど、背後のみわっちの戸惑う顔が容易に想像できる。

「ふたりでここに居たら危ない。先にみわっちが行って」

「やだ! 私、ひとりでなんて逃げない。黄瀬くん、一緒に」

「いいから行け!」

突然の大声に、ビクッと反応するのが分かった。
ごめん、みわっち。早く逃げて。

「……頼むよ、みわっち」

みわっちが躊躇いながらも柵を登ろうとしている気配がある。

ヤツとの距離感を考えても、今逃げられれば彼女は安全だ。

早く。早く。

「おまえ、おまえがいるから、おまえがみわをたぶらかしたんだなおまえ、から、ころしてやる、から!」

ナイフを持ったヤツが鬼の形相で突っ込んできた。

幸いにもと言うべきか、足元も暗く椅子などの障害物も多いので、相手の移動にも速度はない。

直進してくるヤツの進路から逸れるために、椅子の合間を抜け対角線上に移動しようとして……

……何かに足を取られて視界が、歪んだ。

ハッキリとは分からない。
周りにある物より一回り小さいサイズの何かに躓き、転倒した。

「黄瀬くん!」

柵の向こう側に降りたみわっちがこちらを見て悲鳴をあげた。

だめだ。早く離れろ。

「大丈夫だから! 早く! 早く行け!」

薄暗い空間の中で、ヤツの持った凶器が鈍く光る。

まるでそれだけが独立して意志を持っているかのような迫力だった。

「ひゃは、ひゃひゃひゃ、かれしさまよお、いーいカッコウだな? ぼくのみわを、ぼくのみわを、ぼくのみわをとろうとするから、そういうことになるんだ、おまえ、ころして、みわは、みわは、みわはぜーんぶ、ぼくのものだ!」

視線が離せず、身体が硬直する。
オレは、死ぬのか?

起き上がれないまま後退りをするオレとヤツの距離は徐々に縮まってくる。

「やめ……やめて! やめてえぇぇえぇえ!」

みわっちの悲鳴が遠くで聞こえる。

ナイフが、振り下ろされた。




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