第34章 対峙
「……お前に、みわの未来をどうこうする権利なんかねーよ」
「あるよ。あるんだよ。みわちゃんはね、ぼくのだから。
今度会えたら、穴が裂けて内臓が潰れるまでぼくのを突っ込んで、愛し合うんだ。ぼくたちはね、愛し合っているんだよ」
ヤツの顔からは狂気しか見えない。
向かい合わせに座っているが、ゾワゾワと虫が這い上がってくるような不快感をずっと感じている。
「……もうやめて」
薄闇の中から、聞き慣れた声が響いた。
少し低めの、よく響く声。
まさか。
「……みわっち……!?」
ヤツの後ろから歩いてやってくるのは、……みわっちだ。
「な、何してんスか! 帰って!」
「……もう、やめて……」
「みわちゃん!」
パッと顔を明るくしたヤツは、驚くほどの俊敏さで彼女に駆け寄った。
「待て……!」
一歩遅れて立ち上がるが、みわっちは既にヤツの腕の中だった。
羽交い締めにされ、どこから出したのか刃渡りの長いナイフを突きつけられている。
「みわっち!」
しまった……!
「は、はなして」
「みわちゃん、ぼくに会いに来てくれるなんて! 嬉しいよ!」
「みわを離せ!」
「おっと、ナイト様は動くなよ? ちょっと手が滑って、うっかり刺しちゃうかもしれないなあ」
「……ッ!」
迂闊だった。
まさかみわっちが来るなんて。
反応が遅れた。
状況は最悪だ。相変わらず周りは人っ子ひとりなく、薄暗いため足元もよく見えない。
「どうして……どうして私の家が分かったの……」
ヤツはみわっちの身体をまさぐりながら嬉しそうに答える。
「いや、たまたまね? たまたまだよ、高校の文化祭に行ったら、みわちゃんがいて。ちょっと帰りに、ついて来ちゃったんだ。
ずっとぼくに来て欲しかったのに、恥ずかしくて直接は言えなかったのかな。これからは、ちゃんと通ってあげるからね」
「も、もう関わるなって、言ったはず……」
「うふふふ。だっておかしいじゃない。みわちゃんはぼくのものなのに。みわちゃんのせいで、お金返せなくてぼく、危うく内臓売られるところだったんだよお」
何か、何か状況を打破するきっかけはないのか。