第5章 ふたりきり
頭が痛い。喉が痛い……身体が熱いのに寒い。
気持ち悪い。苦しい。
……最悪な気分だ。
みわっちはあれこれオレの面倒を見てくれている。
あんなにひどいこと、言ったのに。
泣かせてしまったのに。
オレ、最低だ。
頭が痛くて目が開けられない。
目が覚めたら、ちゃんと謝らないと。
でもこれ、ほんとに風邪?
こんなにダルくて何にもできないもの?
熱い。寒い。オレ、死ぬかも……
死んだら、謝れない……みわっちに、会えない……。
「みわっち……さっきは……ごめん」
半分、熱に浮かされているような感じで、声が出ているのかどうかもわからない。
冷たくて柔らかい手の感触。
頭を撫でてくれているのは、彼女の手だ。
「ううん、気にしてないよ……」
嘘つき。
さっき、泣いてたくせに。
なんで、オレに気を使うんスか……
気を許せてるの、オレだけじゃないんスか……
黒子っちのこと、好きなんスか……
結局、付き合うのはどーすんスか……
「うん、黄瀬くん、だけだよ」
えっ……
「黄瀬くん、だからだよ」
オレいま、声に出してた!?
「黒子くんだって、黄瀬くんが"信用できる人"って太鼓判を押してくれたからだし……あと、付き合うっていうのは、あの、どこまで本気かわからなくて……」
「本気っスよ」
「つ、付き合うって、何をしたらいいのか分からないし……」
「なんでもイイんスよ。ふたりでできることなら、なんだってイイんスわ……」
「な、なんで私なの……? もっと、黄瀬くんの周りにはいっぱい、女の子が」
「……あんな女たちとは違うんスよ、みわっちは……オレを、見てくれるから」
オレを。
オレ自身を。
「え……?」
そのカオ……分かってない、っスよね。
計算されたもんじゃないと分かって、またホッとした。
「あー……あたま撫でてくれるの、キモチい」
「……甘えんぼさんだね……」
くすくすと笑われながら優しく撫でられていると、ひどい頭痛も少しだけ和らぐ気がする。
そのうちに、もう片方の手でオレの喉元もさすってくれた。
「喉、痛そう……さっきから声が……無理に喋らなくていいからね」
なんでこんなに優しくしてくれるんスか……?
みわっち……。