第32章 映像
今日はみわっちがおかしい。
いや、昨日あんな事があったから、平常心でいられなかったのはオレも同じっスけど……。
なんか、変だ。
それに、まだ痛そうで歩き方が不自然なのが可哀想で。
ゴメンね、みわっち。
練習が終わって家に帰って来ても、なんかぎこちないというか、空気が違って。
お風呂はひとりで入るって行っちゃったし。
これは、もしや……。
その予感は、ベッドに入ってから確信に変わった。
いつものようにオレの腕の中にすっぽりとおさまっているけど、みわっちから迸る緊張感がハンパない。
息、止めてないっスよね?
心配になるくらい緊張してるのが、強張った身体からも感じられる。
「……みわっち?」
「ふ、ふぁい!?」
完全に声が裏返ってるし。
「みわっち……キンチョーしすぎ。別に、毎日絶対しなきゃならないモンじゃないっスよ? セックスって」
……それを聞いたみわっちの耳が真っ赤に染まった。図星っスね。
「あ、え、そういうつもりじゃなくて……」
「まだ痛いでしょ。無理にするつもりなんてないから、安心して寝ていいっスよ」
「……うん……」
優しく腰を撫でると、力んでいた肩の力が抜けるのが分かった。
……オレは毎日シてもいいんスけどね。
でもそれを言うと絶対みわっちは無理してオレに合わせようとするだろうから、言わない。
みわっちの香りを嗅いでいると気持ちが落ち着く。
彼女と眠るようになってから、寝つきもいいし眠りも深くなった。
みわっちはちゃんと寝れてるんだろうか。
「みわっち……この体勢、寝にくくない?」
「……黄瀬くん、寝にくい?」
「んーん。オレは快適」
「私も……黄瀬くんの匂い、好きだから……ちょっと、ドキドキしちゃうけど」
恥ずかしそうに胸に顔をうずめてくるみわっちにドキッとしてしまった。
あれだけ激しい夜を一緒に過ごしても、みわっちは全然変わらない。
控えめで、可愛くて。
これ以上、オレを夢中にさせないで欲しいっス……。
眠りにつきそうになった瞬間、スマートフォンがけたたましく着信を知らせた。