第5章 ふたりきり
「そんなんじゃ、黒子っちだって誤解するっスよ。ちょっと気をつけたらどうスか? そんな無防備でいない方がいいと思うっスけど」
……我ながら、嫌な言い方だ。
「え……どうして黒子くんが出てくるの?」
「……仲良さそうにしてたじゃないスか。連絡先聞けて、嬉しかったんでしょ?」
彼女のごもっともな疑問に、勝手に早口になっていく。
オレらしくない。ホントに、オレらしくない。
「私……今まで友達いなかったから……でも、黒子くんだけじゃないよ。黄瀬くんのだって教えて貰えて、嬉しかったんだけど……」
「オレに気ィ遣わなくていいっスよ。結構強引に誘ったりしてたから、断りづらかったんスよね。別に、嫌なら嫌って言ってくれていいっスから」
あー……オレなんでこんな言い方してるんだろ……何イラついてんだろ……。
みわっちが、黒子っちにはすんなり慣れたり、楽しそうに話してたから。
黒子っちも彼女に惹かれてるとか言って……なんだかそういうのが積もり積もって今、八つ当たりしてる。
よりにもよって、みわっちに。
黒子っちも、みわっちも悪くないのに。
優しくしてあげたいのに。
そう思えば思うほど、口から出る言葉は冷たくなっていく。
彼女が、下唇を噛んで涙を我慢している姿を見て、心が痛む。
でも、止められない。
今、彼女の頭の中はオレの言葉でいっぱいだ。
もっと、いっぱいになればいい。
もっと。
歪んだ独占欲を満たすために、オレは攻撃していた。
「……もうオレ、寝るっスから。明日からまた部活復帰しなきゃだし。みわっち、ベッド使っていいっスよ」
みわっちは、下を向いたまま言葉なく大きく首を横に振った。
きらり、目に溜まっていた水滴が宙を舞った。
ズキンと痛む胸。
「……そっスか。じゃあ申し訳ないけど、布団で寝て貰えるかな。おやすみ」
すかさず間接照明に切り替え、ベッドに潜る。
みわっちが布団を掛ける音がする。
オレに気づかれないように、少しだけ鼻をすする音がした。
オレ、ほんとガキだ。
みわっち、ごめん。
イライラして寝付けないかと思ったが、病院で貰った強い薬を飲んだせいか、すぐに泥のような眠気に吸い込まれていった。