第5章 ふたりきり
彼女の制服のブラウスや下着は洗濯から乾燥まで終わったけど、部屋着がないからとオレのTシャツを貸したら……
エロい。エロすぎる。
姉ちゃんから借りるべきだったか。
迂闊だった。
小柄ではない彼女だから、よくある「ちっこい子が彼のぶかぶか服を着る」破壊力はないだろうと侮っていた。
しかし、細い肩がくっきりと現れ、美しい鎖骨とシャツの裾から覗いたスラリと長い足。
更に、紅潮した頬。
「お風呂、お借りしました……ありがとう」
「シャンプーとか分かったっスか?」
「うん、お母さまが教えて下さったから」
んんん、とにかくこのままこの姿を見てるのはまずい。
「みわっち、今日は本当ありがとね。結局こんな時間になって、帰れなくなっちゃってごめん」
「ううん、寝ちゃって図々しく居座ったのは私だし……ご家族の皆様にもご迷惑をお掛けして、申し訳ないよ」
「みわっちって、言葉遣いがキレイっスよね」
ピンと伸びた背筋に、真っ直ぐで美しい言葉遣い。
オレの周りを取り巻く女子にはいない。
「え? そうかな。そんな風に思った事なかった……」
「いっつも感心してたんスわ」
「えー……な、なんか恥ずかしい……」
更に顔を赤くするみわっち。
オレのバカ。エロ度を上げてどうする。
「じゃあ、朝までゆっくり寝て。客間になっちゃって申し訳ないっスけど」
「あ、ううん、実はね……あの、深夜また、黄瀬くん寝苦しかったり、熱が上がるんじゃないかって心配で、一緒の部屋でってお願いしちゃったの。だから、ここで休ませてもらおうかと思うんだけど……」
「えっ」
「あ、ごめんね、ゆっくり眠れないよね? やっぱり他の部屋でお布団敷いてもらおうかな」
「ねえ……わざとっスか?」
「え? 何が……?」
「男子コーコーセーの部屋に来てそれはまずいっしょ。何されても文句言えないっスよ」
「あ……ご、ごめんなさい……」
彼女は、ハッとして恥ずかしそうに小さくなってしまった。
わざとなわけないのに。
そんなのわかってるのに。
嬉しいのに。
きっとこれはオレだから言ってくれてるわけじゃなく、優しい彼女だから。
例えば黒子っちにだって同じ事言うんだと思ったら、無性に腹が立ってきた。
なんだ、この気持ち。