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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第30章 疑心と安心と


黄瀬くんの腕の中は、怖くなかった。

肌が触れる直前までは、また拒否してしまうのではないか、繰り返す回想で息が詰まるのではないかと心配だったけど、大好きなひとの腕の中は、安心しかなかった。

視界が全部黄瀬くんで埋め尽くされて、見られているかもしれない恐怖が薄れる。

でも、頭の中にある映像だけはハッキリ、くっきりとしていて、私の精神を侵し続けていた。

息が少し、苦しくなる。
またあんな苦しい思いをしなきゃいけないの。

「はぁ……」

「息、苦しい?ゆっくり、深呼吸して。ん、そうそう。でもこれじゃ眠れそうにないっスね」

「あ、大丈夫……すぐ寝れると思うから、黄瀬くん先に寝てて」

多分このままでは永遠に眠気は来ないだろう。
でも、疲れている黄瀬くんまで巻き込みたくない。

「みわっち、ウソがヘタ」

思わず顔を上げると、ぶつかりそうなくらい近いところに顔が。

黄瀬くんは私の顎に手を添えると、優しく唇を重ねてきた。

「んっ……!?」

驚いて、思わず押し退けるように手で黄瀬くんの胸を押してしまった。

「イヤ?」

……嫌、なわけない。

「び、びっくりしただけ……」

「余計な事、考えないで……オレの事だけ考えて、そのまま寝ちゃえばいいっスよ」

再び重なる唇。
横で寝ていた黄瀬くんが私の上になる。

黄瀬くんの重みを全身で感じた。
気持ちいい。唇が。身体が。

「ん、あ……」

濃厚で官能的なキスじゃなく、優しく頭を撫でられるような、胸がほわんとなるキスだ。

うっすら目を開けると、頬を染めた黄瀬くんの顔が目に入ってきた。

気持ちいい。しあわせ。
柔らかい舌が、気持ちいいところを擦るとじわじわと襲い来る快感に目を閉じた。

いつもなら火がついて、眠気どころじゃなくなるんだけど……不思議と今日は余裕を持ってキスを味わえてる。

頭を撫でられているからか、とても安心する。
息をすると黄瀬くんの香りでいっぱいだ。

きもちいい……

気付くと、瞼が重くなってきている。

指先が動かない。もう、身体が先に睡眠状態に入ってしまっているかのようだ。

ああ……きもちいい……

体重が何十倍にもなって、シーツにずぶずぶと沈んでいくような感覚。

ゆっくり、ゆっくりと手を離すように意識が遠のいていった。



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