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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第30章 疑心と安心と


「あー蒸し暑い! 汗でベッタベタっス」

台風が近づいているからか、湿度が高く、不快な汗をかいている。

「……黄瀬くん、先にお風呂入っていいよ」

「みわっちはどーすんの?」

「……後から、入るよ」

でも多分、また無理だ。
どうしよう。

「みわっち、一緒にはいろ?」

満面の笑みで黄瀬くんが言った。
一瞬、時が止まる。

「えっ」

「ほらほら、オレのワガママきくと思って!」

ずるずると脱衣所に連れて行かれる。
昨日はあきと一緒だったから大丈夫だったけど……。

黄瀬くんが服を脱ぐと現れる、美しい肉体。
足の件で安静にしている間上半身のトレーニングを増やしたから、以前より背中にも筋肉がしっかりとついてきた。

「怖い?」

怖くはなかった。

でもそれとは別に、やっぱり彼の前で肌を見せるのは何度やっても慣れない。

「怖くは……ないけど、恥ずかしいから先、行って……」

「ん、リョーカイっス」

くしゃっと頭を撫でられて、胸が躍った。


黄瀬くんが浴室に入ってから、服を脱ぐ。

鏡に映った自分の身体を見て、確かに以前より丸みを帯びて、女らしい身体つきになっているなと感じた。

おずおずとタオルで隠しながら浴室に入ると、黄瀬くんは髪を洗っていた。

「あ、ゴメンね。すぐ代わるっスから」

濡れた彼から放たれる色気に目眩がしつつも、この間のような雰囲気になる事はなかった。

今は、前回のように後ろから黄瀬くんに抱きとめられる形で、バスタブに浸かっている。

「……オレ、みわっちに避けられたらどうしようかってちょっと考えてて。でも、良かったっス」

お互いの肌が熱いのか、お湯の温度が高いのかは分からないけど、触れ合った所が熱くて、溶けてくっついてしまいそうだ。

それに……
さっきから、お尻に硬いモノが……。

「……あの、黄瀬くん」

「ゴメン。言わないで。みわっちとくっついてると、こうなるもんなんス。なんもしないから、安心して」

「そっ、か」

嫌でも黄瀬くんの中の男を感じてしまって、つい意識しちゃう。

「不能じゃなくてヨカッタ」

「ん?」

黄瀬くんが小さい声で何かを囁いたけど、水の音にかき消されて聞き取ることが出来なかった。

「なんでもないっスよ」



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