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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第30章 疑心と安心と


「あんた何よ、さっきの」

あきは制服に着替えながら、怒りの感情を隠さずに話しかけてきた。

「さっきの、って?」

「なんか黄瀬とえらい他人行儀でさ、なんであんな態度取ってんの? あたし今夜からはこっち来ないからね?」

「えっ……」

それはそうだ。彼女には彼女の生活がある。
迷惑ばかりかけ続けるわけにはいかない。

「黄瀬の事、怖いわけ?」

真っ直ぐなその目を合わせることができない。

「わかんない……確かめるのも怖くて、近づかないようにしちゃってる……」

「まあ、あたしはストーカーされた事ないし男が怖いわけでもないから、あんたの気持ち全然分かんないんだけど……。自分の味方だけは見失わないようにしなよ」

分かってる。頭では、分かってるんだけど。

「あんたはもう少し黄瀬に甘えた方がいいよ」

「……そうなのかな……」

本当にそうなのかな。
いつもいつもいつも、甘えてばかりで。
甘やかされて、とろとろに溶かされて。

……いくら考えてもいい考えなんて浮かばない。
思考回路が壊れちゃったみたいだ。

「みわ、学校行けんの?」

「行くよ。朝練もあるし。……家に1人でいる方が、心細くていやだ」

1人になるのが、今はとてつもなく怖い。




学校に着いてからも、あらゆる窓やドアが気になって、授業中も部活中もキョロキョロしてしまった。

黄瀬くんとはずっと一緒だったけど、2人の距離は朝のまま、縮まることもなく夜を迎える事になった。

「はー……今日も疲れたっスね。夕飯どうしよっか。スーパー行って今から作るんじゃ……ちょっと大変っスよね。外で食べてく?」

近所の和食定食屋に2人で入る。
安くて量が多い、お気に入りのお店だ。

「いらっしゃいませー! 2名様ですか?」

「ハイ。スンマセン、あそこの席がいいんスけど」

「かしこまりました。こちらにどうぞー」

涼太が指定した席は奥まっていて、周りから見えなくなっている席だ。

「ここなら少しだけ落ち着いて食べれるっスかね?」

「うん……ありがとう」

黄瀬くんはずっと優しい。

「ん? みわっち、食べないの?」

すき。すき。だいすき。

「食べるよ……いただきます」

大好き……。



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