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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第30章 疑心と安心と


いつもよりも少し早く目覚めた。
まだ2人が起きる時間ではないだろう。

向かいの部屋を覗いて2人が眠っているのを確認してから、朝のロードワークに出た。

いつも通りのリズムで、いつも通りの事を。
混乱した頭がスッキリするようだ。




家に戻ってくると、みわっちがちょうど部屋から出てきたところだった。

「あ、黄瀬くん、おはよう。走ってきたんだね」

「おはよう。うん、行ってきたっス。ごめんね、留守にしてて」

「大丈夫だよ。こちらこそ、謝らないと。黄瀬くんのバスケに影響出たら大変。ごめんなさい、迷惑かけて」

……この子は此の期に及んでまだそんな事を言っているのか。

「みわっちはオレの事ばっか考えてないでちょっとは自分の事心配して欲しいっス」

「そう言われても……黄瀬くんの方にずっと迷惑かけてるのは変わらないんだし」

あんなにも恐怖にさらされてなお、オレにこうして気を遣うなんて。

みわっちを抱きしめたい。
けど、今のこの距離を詰めることができない。

みわっちは、オレの事も怖いだろうか。

彼女の感触を、香りを、体温を、オレの身体中が求めている。

オレで、安心させてあげたい。

手を伸ばそうとした瞬間、みわっちの部屋のドアが開いた。

「おはよう。……あ、お邪魔したか」

あきサン、あと5分待って欲しかったっス……。

「あ、あき、おはよう」

みわっちは逃げるように部屋に戻ってしまった。

やはり、だめか。

あきサンがジロリとオレを睨む。

「……黄瀬、なんかヘタした?」

「してねっスよ、まだ何にも」

「……」

それ以上は何も言わず、あきサンもみわっちを追って部屋に戻っていった。

オレは結構色んなものに免疫あるし、普段から何かと器用にこなすタイプだけど、さすがにみわっちに拒否られるのだけはすんなり受け入れられないっス……。

ずしりと重くなった心を引きずったまま、制服に身を包んだ。


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