第82章 掌中の珠
「どうすんのよこの大男。誰が運ぶの」
頭上からはあきサンの冷たい声。まるでオレが寝てるかのような言いぶり。
「オレ寝てねえって」
「テレビ消した途端目を覚ますオヤジみたいなこと言うな」
ああ、そうそう、うちの親父も全く同じで……じゃなくて。全然眠くないのにさっきから何言ってんだ、あきサンは。
「黄瀬君、ほら、布団まで一人で行けますか?」
黒子っちまで、オレに肩貸そうとする始末。
大丈夫だって。風呂はいろかな、オレも少し疲れてるのかもしれない。熱いお湯をかぶればスッキリ目が覚めるかも。
「もっかいシャワー借りてから寝るから大丈夫っス……」
「いや死ぬだろやめろ。事故物件にする気か」
「ん〜…………」
なんか、そんな事言ってたら急に瞼が重い。目の周りが熱く感じる。
んで、意識がぷつりぷつりと途切れるというか。
視界がテーブルの色に染まっていくみたいな。
あー、眠いのかも。
みわの安心しきった寝顔に影響されたのかな……。
「マジで寝たわ」
「仕方ないですね……ボクが運びます」
「大丈夫? 手伝おうか」
「いえ、コツ知ってるので……よい、しょ」
「おお、すご。全く、迷惑かけるなっての」
「まあ……多分、今日は相当予定を詰めに詰めて来たんだと思うので……黄瀬君もお疲れだったみたいですね」