第82章 掌中の珠
心身共になんとか平常時に戻し、ダイニングに戻ると黒子っちとあきサンはまだ飲みながらおしゃべりをしていた。
「お、ちゃんと戻って来た」
「遅かったですね」
「寝付くのを見てただけっスよ」
あきサンはニヤニヤしながらオレを上から下まで眺めてる。
「ふーん、やればできんじゃん」
……気付かれてないはず、だけど。
だけど……
「……いや……マジ今大人しく帰って来たオレを表彰して欲しい気分スわ……」
「はいはい、よくできたで賞」
「はーーーー……」
マジでこの暴走癖、なんとかしないと。
特にアルコールが入るとブレーキの利きが悪くなる自覚はあるんだ。
イスに座ると、空きスペースに敷かれた布団が目に入った。
「あ、黒子っち布団敷いてくれたんスか、サンキュー」
「後になると面倒になってしまいそうだったので」
「はは、確かに」
黒子っちと並んで寝るなんて、なんか中学の合宿ん時みたいで懐かしいな。
皆で枕投げしたっけ。
「黄瀬、あんたさ、ほんとにみわのこと大事にしなさいよね」
「分かってるっスよ……」
「ふん、どーだか」
あきサンは、散々オレのワガママに付き合わされてボロボロになったみわを見ているからだろう、容赦ない。
いやまあ、自分でもそう思うけど。
「いやホントに。高校時代はまあなんつーか、今思えば完全に快楽を覚えたての猿って感じだったんスけど……今はただ、大事にしたいなって思うんスよね」
「今は分別ついた猿って感じよね」
「猿から卒業したって話なんスけど!」
マジで容赦ねえな! もう!
「別にチェリーだった訳じゃないでしょ? 高校ん時なんか完全にエロ猿すぎてちょっと引いたわ」
「あきサン、言い方! 健全な男子高校生ならあんなもんでしょ!? おまけに……みわとすんのは、全然……他の女とは全然違ったんスよ」