第82章 掌中の珠
オレが、一緒に暮らしてたらどうだろうか。安心して薬飲めるかな。
そもそも、不眠自体が良くなるかもしれない。
ただの自惚れかもしんないけど、みわはオレと居ればちゃんと寝られるみたいだし。
実際、一緒に暮らしていた時はそれほど酷くなかったみたいだし。
……なんか、必死にメリットをアピールしてる気分になってきた。
オレと一緒に暮らすと、こんなにいいことがあるよって。
「身体、しんどくないんスか」
「うん、ありがとう……ほんとに眠いだけ、なの」
あれから、特に薬物の副作用が残ったりはしなかったのが不幸中の幸い……精神的な影響がどのくらいあるかは、正直なところまだまだ分からないけど……。
「疲れたんスね。おやすみ」
「おやすみなさい……ん……っ」
そっと唇を重ねながら柔らかい耳朶に触れると、いつもより温度が高いのを感じる。眠いからだろうか。
みわは陽だまりの猫のように気持ち良さそうに目を細めて、わずかに身じろいだ。
「良い夢見れますように」
「涼太……」
「ん?」
「ありがとう、だいすき……」
へにゃっと微笑んで、胸に顔をうずめながらそんな事を言うみわ。
……ちょっと、そんなんされたらスイッチ入るんスけど……。
頭をそっと撫でると、間もなく聞こえる寝息。
相当眠かったみたいだ。
「……オレも」
やっと、それだけ言うことができた。
毎秒毎秒、なんでこんなに好きなんだろう。
……可愛い不意打ちに、一瞬で勃ち上がった下半身。
鎮めてからリビングに戻らねーと……頭の中で必死に九九を踊らせる。はぁ、情けない。