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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第83章 掌中の珠


部屋中に響く、麗かな電子音のメロディと「お風呂が沸きました」の声。
自分達が入りたくて沸かしたくせに、水を差されたような気持ちになるんだから、勝手なモンである。

「あ、沸いたわ。どうする?」

それはあきサンも同じだったようで、その声色から喜びは感じ取れない。

「女のコ達、入ってくれば? 汗流したいんじゃないスか」

「んー、乾杯したばっかなんだけど……いや今入んないともう入らない気がするわ」

散々汗もかいたとあって、風呂が沸くのを待ち切れずに飲み始めたオレたち。
酔いが回ったら風呂なんか危ないから、女子達は今のうちに入っておいて欲しい。

「んじゃあたしお先に〜」

「うん、いってらっしゃい」

あきサンはアレコレ無駄に譲り合うくらいなら、さっさと自分から入ってきてしまおうというタイプ。
みわとは真逆の考え方だけど、だからこそふたりは相性がいいのかもしれない。

あきサンが風呂に行って、リビングにはオレとみわと黒子っちだけになった。

グラスの中の液体はシュワシュワとひとりで踊ってる。
もうひとくち飲むと、ジュースとは違った感覚が喉を通った。

「なんかもう酒飲めるトシになってるって事に、毎回驚くっスわ……」

「大人になるのはあっという間ですね」

「大人……っスねえ」

早くオトナになりたいって、いつも思ってる。
高校生のあの時より、何年も経ったのに、まだ。

「……大人、って、なんだろうね……」

みわが、グラスの中の液体を見つめながらそうこぼした。

「もう成人して……こうやってお酒も飲めるようになって……でも、思っていた"大人"とは全然違うなぁって」

「確かに。小学生の頃思ってた20代ってすげえ大人だったっスけど……なんも変わってないや」

大人って、どうやったらなれるんだろう。


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