第82章 掌中の珠
オレたち四人は、それぞれ自分の世界を確立しつつ、所々で気の合うメンバーだ。
話題も、学校のこと、勉強のこと、バスケのこと、本のこと……自分の強みである分野とそうでもない分野が混ざり合って、いつものバスケのメンツで揃った時とは全く違う会話になる。
付き合いが長いから無駄な気遣いもなく、飽きも来ない良い関係だと思う。
机の上にはチューハイやビール缶、黒子っちが飲んだカルピス、コーラのペットボトル。ミネラルウォーターやウーロン茶はなんだかんだ皆で飲んでるから、2リットルのペットボトルが数本転がっている。
久しぶりの、気を張らず素でいられる貴重な時間を堪能した。
「思えばこの家、間取りがボクの実家と結構似ています」
トイレから戻った黒子っちが、新しいミネラルウォーターのペットボトルを開けながらそう言った。
「そうなんスか?」
「はい、うちも廊下出てこっちがトイレで、洗面所が……」
「へえ、そうなんスね」
「動線がいい間取りとか、あるのかもしれないね」
思えば、黒子っちの家って行ったことないな。
今は一人暮らしになったみたいだけど……。
「はー……今何時?」
会話の間が少し増えて来て、あきサンがそう言って時計を見上げた。
全然時間を意識してなかったけど、そろそろ日も変わろうとしている。騒いでるとあっという間だな。
ふと、隣に座ってるみわの目がトロンとしていることに気が付いた。
「みわ、眠いんスか?」
「……あ……うん、ごめんなさい、すこし……眠くなって来ちゃったかも」
複数人でいる時にこうなるのは珍しい。
オレと二人でいる時はたまになるけど……。
「寝た方がいいっスよ。疲れたでしょ」
「今日はもう寝なよ。あたしら適当にしとくし」
あきサンはそう言って、ビールの缶をあおった。
女性陣、どちらもオレなんかより全然酒が強い。