第83章 掌中の珠
「美味しかったね。今度は他のメニューも食べたいわ」
「うん、また来よう」
みわとあきサンは嬉しそうに話してる。
「おうちの近くに美味しいお店があるって嬉しいな。今日はご飯作るのお休みしたいなって時についつい行っちゃいそう」
みわはホントにマジメで頑張りすぎだから、忙しい時くらいは外食して欲しい。
コンビニもスーパーも郵便局も近いみたいだし、良い所に新居が決まって良かった。
「どうするー? みんなまだ帰らないんでしょ? なんか買ってって家で飲む?」
「ボクはまだ未成年なので……」
あきサンにそう返事してるのを聞いて思い出した。
そうだ、黒子っちの誕生日は1月。
「黄瀬は?」
「んー、オレはどっちでも」
「黄瀬君、飲んでも大丈夫なんですか?」
「うん、まあ試合が近いのに泥酔とかすんのは流石にナシっスけど」
スポーツ選手として、やはりアルコールは控えめに生きているという面もあるけど……そうは言ってもまだプロではない立場としてはお付き合いもあるというもの。
このメンバーなら無理に飲まされたりなんてこともないだろうし。
「あたし、飲もうかなー。みわも飲む?」
「あ……私は……」
「嫌ならいーよ」
……あきサンは勿論知ってる。
知ってて、あえて誘ってるんだろう。
「……いいんじゃないスか、眠くなったら寝ちゃえばいいんだし」
「このメンツなら気楽じゃん」
「……うん、じゃあ、少しだけ……」
みわが楽しめなくなるのは、絶対違う。
とは言え彼女の性格じゃ、暫く外で人と飲むということはしなくなるだろう。
ならせめて、気安い仲間内だけでも楽しんで欲しい。
普段から酒には興味ないタイプだとは分かってるけど、オレと一緒に飲む時のみわは楽しそうだから……きっと嫌いではないんだと思う。
あの笑顔でいて欲しい。
そう思ってしまうのは勝手だと分かってるけど。