第83章 掌中の珠
「なんかこの座席だと合コンみたいっスね」
注文をして開口一番、涼太がそんなことを言うものだから一瞬なんて返答したらいいのか分からなくて、ぽかんとしてしまった。
「確かに」
あっさりとそう返したのはあき。
そう言えば彼女は、よく週末に誘われて行っていた。
男女分かれて向かい合わせになっているからかな?
思い起こせば、こういう場合には私は涼太の隣に座ることが多かったような気もする。
「ボクは合コンをした事がないのでよく分かりません」
どうやら黒子くんも未経験らしい。
確かに、彼が合コンに参加している姿はあまり想像がつかない。
ここは、涼太とあきのお話を聞くことになりそうな予感だ。
「あきサンは、その口ぶりだと参加してそうっスけど」
「うん、誘われりゃ行くよ。自分から開催しようとは全く思わないけど」
聞き役に徹すると思っていた黒子くんが、少しだけ身体を乗り出して聞いた。
「あきさん、行く時はみわさんを誘って行くんですか?」
「えっ、私?」
まさか話題に上るとは思っておらず、素っ頓狂な声が出た。おまけに、私に話しかけられたんじゃないのに。
「ううん、みわは絶対誘わない。変な虫ついたら困るもん」
「そうなんですか」
「無農薬野菜には虫がつきやすいって言うっスよね。あきサン、みわに変な虫がつかないように気遣ってくれてるなんて、なんかカンドーするんスけど」
「いや、あたしからしてみりゃ、あんたが一番タチ悪い毒虫なんだけどね」
「ちょ、心外なんスけど!?」
「ふ、ふふっ」
ふたりの掛け合いが本当に面白くて、大好き。
たまらず笑ってしまうと、目が合った皆も笑ってた。