第83章 掌中の珠
「おー黒子っち、久しぶりっスね」
「こんにちは」
「黄瀬君は相変わらず元気そうだな」
「……マクセサンも、どもっス」
「はは、そう露骨に態度を変えるのは普段の君らしくないね……」
お昼を食べ終わってすぐ、転居前の家で涼太とマクセさんが合流した。
マクセさんに冷ややかな視線を送る涼太にハラハラしてしまうけれど、黒子くんはなんとも思ってないみたいだ。
「んじゃー再会を楽しんでるとこ悪いけど、早速運び出すよ〜よろしく!」
あきもあえて空気を読むのをやめているのだろうか、彼女の一声でそれぞれが持ち場についた。
元はと言えば今回は、マクセさんが軽トラックを借りてきてくれて荷物を運んでくれると言ってくれたのがはじまり。
涼太は段ボールを中心に、そして黒子くんとマクセさんが家電を中心に運んでくれるという事だったんだけれど……。
「黒子くん、本当に大丈夫? 冷蔵庫とか洗濯機とかまで……」
「大丈夫ですよ、ファミリー向けのと違って言うほど大きくないですし、ボクひとりじゃありませんし」
なんとか私たちでも運べないかと、あきとチャレンジしてみたけれど、とてもじゃないけれど持って歩くのなんて不可能な重さだった。
「でも……」
「こう見えても男なので」
こう見えても、って黒子くんは言うけれど、彼はどこからどう見たって男性だ。
彼が男性以外に見えた事がないんだけれど……?
ああでも黒子くんって、こんな事を言ったらとっても失礼なんだけれど、涼太達といるとすごく小柄に感じてしまうからだろうか。
とは言うものの、こうして一緒に居ると彼もれっきとした男性なのだなと思う……いや、本当に、絶対にお聞かせ出来ないほど失礼なんだけれども。