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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第83章 掌中の珠


作業員さん達も帰っていって、再びひとりきりになった室内。
耳が痛くなるような静寂が訪れた。

まだお引越しは終わってないどころか、始まってもいないんだけれど……なんとも言えない解放感に、自然と呼吸が深くなる。
ずっと今の家に感じていた不安感みたいなものがなくて、落ち着く……。

そうだ、のんびりしてる場合じゃない。
残りの箱も確認しなきゃ。

箱を開けて中を覗いてみると、片方はシーツ、もう片方はずっしりと重くて、掛け布団のようだった。
一式で頂いてしまうなんて、一体いくらかかったんだろう……納品書や説明書は入っていたけれど、肝心の請求書が見当たらない。

元々無料で頂くつもりなんてなくて、お支払いするってお約束したんだけれど、あとでちゃんと確認しなくちゃ。

掃除も一通り終えて、カーテンもかけた。
お部屋が明るく感じられる、薄いイエローだ。

あきが帰って来てお昼ご飯を食べたら、手で運んだ荷物を少し片付けて、前の家に戻らなきゃ。
そして皆からの連絡を待とう。

皆忙しいのに、申し訳ないな……。

一息ついたら、謎の倦怠感が身体の奥底から浸み出してきた。
せっかくだから、ソファ……座ってみようかな。

「わ……」

硬すぎず、柔らかすぎもしなくて凄く座りやすい。
寄りかかると、全身を包んでくれるみたいな安心感だ。
幅も十分な長さがある。
ベッドにしない状態でも、肘掛けに頭を乗せるとはみ出す事なく横になれる。

ここで本を読んだら気持ち良さそうだなぁ。
ころりと横になって、そんなことを考えていた。

涼太とふたりで座ってもゆとりがあっていいな。
お茶飲みながらお喋りしたり……小さいテーブルとかあったら、便利かな。
ウキウキしてきちゃった。

なのになんだか、瞼が重くなってきた。
これからお引越しだっていうのに、呑気な事言ってる場合じゃないんだけれど。

だけれど……。


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