第83章 掌中の珠
「……これ、新品……では……?」
お姉さんから新居に送られて来たソファベッド……梱包の段ボールからして……新品のような、気がしているんだけれど……?
でも、もしかしたら段ボールも綺麗に保存しておくタイプかも……?
いや、そんな事をグダグダ考えてても仕方ないよね。
今日は引越し日で、午後から涼太達がお手伝いに来てくれる。
私は午前中カーテン類の取り付けをするのと、お姉さんからの荷物を受け取るのとで、一足先に新居へと来た。
あきはお昼ご飯の買い出しに行ってくれているところである。
そして、ソファベッドの巨大な箱と共に届いたのは、これまた真っ黒の大きめな四角い箱が二つ。
なんだろう?
「どちらに設置しますかー」
「えっ?」
「設置サービス込みでお支払い頂いてますよ」
「……あっ、こちらに、お願いします」
設置サービス込みって……やっぱりこれ、新品だ。
ちゃんとお支払いしなきゃ……納品書、箱の中見てみないと。
ひとりの時に男性を部屋に入れるのには抵抗があるけれど……運送業者さんにまで、そんな事言ってられない。
ドアの側に立って、作業員さん達のお仕事を見届けた。
……とは言うものの、作業は15分ほどでアッサリと終了してしまった。
ソファベッドの造りは単純で、背もたれと肘掛けを床に置いてから、座面をはめ込むタイプのようだ。
一見簡単そうに見えるけれど長さもあるし、重さもかなりありそうで、自分でやったんじゃきっとこうはいかなかっただろう。
お姉さん、作業員さん、ありがとうございます。
お出しするお茶も何もなかった……申し訳ない……。
出来上がったソファは、二人座っても十分ゆとりがありそうな大きさ。
ベッドにするとダブルになるって言ってた。
それも、シートクッションを引っ張るだけでベッドになる。その時間、僅か数秒だ。
便利と言うほかない。
家具が全然ない部屋だから、思っていたよりも圧迫感もなくて、背の低いグレーのソファはなんだかすごくおしゃれに見える。
お姉さんのお気持ちが、とっても嬉しい。