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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第83章 掌中の珠


「あとは、あきが声をかけてくれて黒子くんも来てくれるみたいで」

「黒子っちも!?」

オレの驚きを真っ先に感知したのか、ティーカップの紅茶が踊るように波打った。

そうだった。あきサンと黒子っちはなんでか仲が良いんだった。

「今の家に来る時は黄瀬家の皆さんにお手伝いして貰ったし……ありがたいよね、本当に」

みわは感傷に浸ってるけど、オレはちょっとそれどころじゃない。

「涼太は大会も近いんだから、無理しないでね。いつもありがとう」

「いやいや、そのメンツが集まってオレがいないとか、ないっスわ」

みわに全然その気がないのは分かるんだけど、ふたりとも……っつか黒子っちなんかはまだみわの事を想ってるはず……そう思うと、呑気に構えてはいられないってもんで。

「本当に大丈夫だよ」

「ん、引越し日決まったら教えて」

「う……一応、お知らせはするけれど」

急に紅茶に渋味を感じるのは何故だろう。
いやいや、気のせい気のせい。

……とはいえ、引越し日にちょうど体を空けられるだろうか。
あー、もどかしいな。

「それで、あの……涼太」

「ん?」

「あの、大会が終わってからでいいんだけどね」

机の上で祈るようにした細い手がもじもじしている。

「うん。なんスか?」

そう聞き返したんだけど、次の返事が来るまでゆうに数十秒の時間を要した。

「水族館に、行かない?」

「え」

引越しとか学校とかバスケとか、なんかそんな話題かなと思ってたら……デートの、お誘い?

「あっ、無理にとは言わないの、人目もあるし時間を作るのも……」

「行こう」

予定なんかを考える前に、口から出てた。
みわからどこかに行きたいなんて誘われたこと、あっただろうか。

「行こ、水族館。絶対時間作るっスわ」

絶対叶えてあげたい。
なんなら今から連れてってあげようか。
暴走しそうになって、必死に押し留めた。


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