第82章 夢幻泡影
「みわが引越した方が安心ってんなら、腹括って友達にも話して引越しすりゃいいじゃん。協力的なんだろ」
「……はい」
自分が言っている事にも、感じている事にも、何一つ嘘はない。
平穏を求めて引越ししたいのも本音、でも付き合わせたくないのも本音。
「友達に迷惑かけらんないっていうのは本心なんだろーけど、それで大事な物事決めんのは間違ってんじゃねえの。責任転嫁と一緒だよ」
「……」
責任、転嫁。
そんなつもりは無かったけれど、でも閑田さんの言うことも一理ある。
「……っと、悪い。余計なこと言ったわ」
「いえ……閑田さんの、言う通りだと思います」
あきに迷惑をかけたくないからというのは、あきを理由にしているに過ぎない。
そんなの、ずるいよね……。
「ちゃんと、考えます」
言い訳にして、ちゃんと考えるのを放棄していたかもしれない。
もっと手段があったかもしれないのに。
悩むのは全ての可能性を洗い出してからじゃないのか。
"ちゃんと"、が出来ていたか?
甘え癖がついているんだ、より意識しないと。
「思った通りに相談したか?」
「え?」
「その友達に、お前に迷惑かけたくないから悩んでるって言ったか?」
あきに……
「……言って、ないです」
「なんで」
「言ったら、気を遣わせてしまうから……」
あきは優しいし面倒見がいいから、そんな事に悩んでいると聞いたら、気を遣って引越しを進めるように言ってくれる気がする。
「いいじゃん、遣わせてやれよ」
……え?
閑田さんの発言は、私が予想したどれとも違っていて。
「お前が大事なんだろ。お前の事を大切に思ってっから、協力しようとしてくれてんだろ」
「……」
「なんで驚いてんだよ」
「え、あ、いえ……」