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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第82章 夢幻泡影


「すみません、本当に大した事じゃないんです。ちょっと引越しをどうしようかなって考えてただけなので」

物凄く深刻な悩みだと思わせてしまったかもしれない。
全然そんなんじゃないんだって伝えないとだ。
チームメイトに不要な心配をかけるなんて、サポートメンバー失格。

「ふーん、みわって今一人暮らし?」

「いえ、友達とルームシェアしてるんです」

「黄……彼氏と同棲してんのか」

「ちっ、違います! 高校からの友達です!」

自分でも驚くくらいの速度で返答してしまった。
そして少しだけ……涼太と短期間一緒に暮らした時期の事を思い出してしまった。
いけないいけない。気が緩んでる証拠だ。

「慌てるところが怪しいんだよな。みわがルームシェアとかするタイプに思えないんだけど」

「本当に、本当なんです!」

「まー、どっちでもいいんだけど。なんで?
喧嘩でもしたん?」

あっさりとそう返されて、自分の動揺が恥ずかしい。
どうにも自意識過剰になってしまっていけない。

「いえ……ちょっと私が、今の家だと落ち着かなくなってしまって……でも引越すとなると、友人を巻き込むかたちになってしまうから」

「んで、相手と上手くいってないんか」

「そういう訳ではないんですが……私に合わせてくれるのが申し訳なくて」

不思議だ。
質問されると、答えるために頭の中で整理を始めるから、ごちゃごちゃ考えている時よりも、文章が整って、言葉がすっきり出て来る気がする。

「で? 何に悩んでんの?」

「……なんというか……本当に引越しして、いいのかなって……」

……そしてそれは、きちんと説明出来ない項目が浮き彫りになる。

「でも、家に居ても落ち着かないんだろ?」

「はい……」

家に居て、どうしても疲れてしまう。
勉強をしていても全然集中出来なくて……。

「友達も、絶対反対してるわけじゃないんだろ?」

「はい、彼女はすごく協力的で」

「みわは、どうなんのが理想なわけ?」

「えっ……」

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