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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第82章 夢幻泡影


あきサンは、はぁと大きくため息をついた。

「……あたし、絶対許せない」

その目尻には、涙が滲んでいるように見える。
こんな風にオレとふたりで居る時に感情を露わにするのは、彼女にしては珍しい。

「みわは……ずっと、拒むのを許されなかったのに」

一瞬、オレの頭の中を覗かれたのかと思った。
あきサンは、俯いたまま続ける。

「それが、やっとちゃんと、自分の意思で生きられるようになってきたのに」

みわは、ずっとずっと自分の気持ちを抑えて、封じ込めて生きてきた。
気持ちと身体を犯され続けても、拒否することすら許されなかった。

それが様々な出逢いと経験を経て、少しずつ彼女の中でも変化があって、今やっと自分で前を向いて歩けるようになってきたのに。
みわの努力をぶち壊すようなこと、しやがって。

「なんで、そんな事すんの……なんで、みわばっかり」

声は完全に濡れている。

「あきサン」

「分かってるよ。みわだけじゃない、それこそあたしだってこういう事になる可能性は十分にある。それは分かってる」

やり場のない怒りは、腹ん中でぐるぐると渦巻いて、どんどん温度を上げていく。
きっと、あきサンも同じだろう。

「でも、あんなに必死で頑張ってるみわに、あんまりじゃん」

口の中がカラカラだ。
イガイガする不快感が、ざらついたココロを逆撫でする。

「……あんたに言ったってしょうがないよね。あんただって怒ってんの、分かってる」

なんとかおさまっていた怒りが、また沸騰を始める。
抑えろ、抑えろ。

「……ごめん、ちょっと頭冷やしてくるわ。引っ越しの事は、落ち着いたらみわとも相談してみる」

「ん、分かったっス。任せっきりでごめん」

あきサンは、鼻を啜りながら自室へ戻っていった。


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