第29章 事件
「……ッ!」
「なっ……」
なぜ、こんな物が。
オレも咄嗟に反応する事が出来なかった。
みわっちが蹲ってしまう。
「や、やだ、や、だ……っ……は、はぁっ、あっ……」
「みわっち?」
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……! 息が……っ、できな」
「みわっち!」
いけない。過呼吸だ!
紙袋……は確か、良くなかったハズ。
周りの人間が慌てたら良くないって……落ち着け、オレがパニクってどうする。
「みわっち、大丈夫。オレ見て、ゆーっくり息を吐いて、いい?」
「はあっ、はぁっ……っ、はっ……」
ボロボロと涙を流して苦しそうにしているみわっちを見て、オレの息も詰まりそうだ。
「そうそう。ゆっくり……はいて……ゆっくりっスよ」
「……はあ……ッ……」
発作から30分ほど経っただろうか。
呼吸はようやく落ち着いて、ようやく彼女は寝付いたところだ。
誰だ……
誰だよ……
オレもモデルの仕事を多くやってる時期はファンの子につきまとわれたりした事もあったけど、こういう悪質なものではない。
みわっちの被害の数々を思い出して、歯を強く食いしばった。
その眉間には深いシワが刻まれており、汗がひどい。
あきサンでも呼んだ方がいいのだろうか。
女の子同士の方が、安心するんじゃないか。
冷たいタオルで汗を拭う。
「……ん……私……」
「みわっち、ゆっくり呼吸して。うん、そう。そうっスよ。今晩、あきサン呼んだ方がいいスか?」
「あき……あきに……会いたい」
「ん、分かった」
みわっちの携帯を借り、あきサンに連絡を取る。
決して早い時間ではなかったが、事情を話すとすぐに駆けつけてくれた。
「……何、黄瀬あんた金持ち?」
「いや、違うっスよ、事務所がだいぶ持ってるんス」
「ふーん、モデル様ねえ」
「あき……!」
みわっちが部屋からふらふらと出てくる。
「みわ、ちょっと大丈夫? 死人みたいな顔して」
「じゃあオレちょっと外すっスから。なんかあったら呼んで」
「ん。分かった。ほらみわ、横になんな」
2人は部屋に戻っていった。