第29章 事件
一応、客用の布団持ってきてて良かった。
流石にあんなことがあって、一緒のベッドっていうのは抵抗があるだろうし。
みわっちがいつまで居てくれるかは分かんないけど、ベッドとラグくらいはすぐに用意した方が良さそうっスね。
こんなカタチで一緒に住む事になるのはちょっと不本意っスけど……
「いやあああ!」
断末魔のような悲鳴に、思わず布団を放り投げてみわっちの所に戻った。
「どうしたのみわっち!?」
「イヤ……イヤ……なんで……何……」
部屋の隅に逃げ込んでいるみわっち。
先ほど少し良くなった顔色も、真っ青を通り越して真っ白だ。
恐ろしい物を見たような顔で、ガクガクと震えている。
一体、何が!?
手前にはカバンと散乱した郵便物の山。
そこに、それはあった。
宛名のない白い封筒が2つ。
片方が開封されていて、床には複数の写真。
拾い上げて確認する。
「なんだ……これ……」
カーテンの隙間から撮られているのか。
それとも、室内から盗撮されていたのか。
みわっちの着替えや寝ている顔、掃除している姿、ご飯を食べている姿……彼女の日常がそこには写っていた。
「いや……誰が……ねえ誰が……」
写真を放り出し、みわっちの元へ。
まずは、彼女のケアだ。
「みわっち……」
腕を伸ばすと、みわっちの身体が大きくビクついた。
触れる事はせず、みわっちの目を見つめる。
「みわっち、大丈夫、ここは大丈夫だから。セキュリティしっかりしてるから。ね?」
みわっちの目は虚ろで、焦点が合っていない。
「や……いやだ……いや……ねえ、もう1つ封筒があるの。それも同じ? ねえ」
ショックで錯乱している。
このままは危険だ。
「落ち着いて。ちょっと休もう? 色々あって今は混乱してるし、あ!」
みわっちが凄い勢いでもう1つの封筒を拾い上げる。
嫌な感じがする。
ダメだ、開けちゃ。
「みわっち、オレが開けるから……!」
手と手がぶつかり、白い封筒が落ちてしまった。
中身が一部、床に飛び出した。
「……!」
封筒の中には、精液が溜まった使用済みのコンドームが詰められていた。