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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第82章 夢幻泡影


「ごめん、ヤなコト思い出させたっスね」

「ううん……心配かけて、ごめんね」

こんなにトラブルばかりで、うんざりされているだろうか。
優しい涼太だって、そろそろ呆れるかも……。

でもこの腕の中の温かさに、与えられる安心感に、甘えてしまっている。

「まだ気分悪いんじゃないんスか」

「寝てすっごく楽になったの。もう大丈夫だと思う、ありがとう」

……とは言え、涼太の腕が解かれる気配はない。

「油断しちゃダメっスよ。今日はちゃんと休んで」

「……はい……」

迷惑をかけている身では、こう返事せざるを得ない。
元気な姿を見せれば、涼太も安心してくれるはず。

とは言え、今のこの状況……とってもドキドキするけれど、でもホッとする気持ちが大きくて……このままの体勢でいたら、また眠気が訪れてしまいそう。

本当に、いつもなかなか眠れないのが、嘘みたい。
涼太といると、不思議といつもそう。
考えなくちゃいけないこと、いっぱいあるのに……。

「……大丈夫」

「え?」

"大丈夫"
頭の上から聞こえる声は、確かにそう言った。

「何が……?」

「ちゃんと、夏休み明けたらどう接しようかなんて気にしなくて済む状態で、学校行けるようになるっスよ」

「……? うん、そうなると、いいな……?」

涼太はそう言ったのだけれど……。
どういう、意味だろう……?

特に、深い意味はないのかもしれない。
不安になっているのを感じ取ってくれて、励ましてくれたんだろうか。

頑張って脳みそを回転させるんだけれど……頭や身体に触れる手が優しくて……余計なことなんか、考えたくなくなってしまう。

優しいな……涼太は本当に、優しいひと……。

しっかり、しなくちゃ……もう大人になってるんだもの。

ちゃんとひとりで立って生きていけるくらい、しっかり……。


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