第82章 夢幻泡影
涼太、やっぱり寝惚けて、る?
背後から寝息は聞こえてこない。
眠ってはいないようだけれど……。
「涼太……お腹……空いたよね?」
「ん〜……でも、も少し」
眠っていたからだろう、背中で感じる涼太の体温が高い。
いや、私も眠ってはいたんだけれど、彼の方がもっとあったかく感じる。
なんて広い胸なんだろう。まるで包み込まれているみたいだ。
涼太は少し細身に見えるけれど……全くそんな訳はなくて。
ふとした時に、男のひとなんだって思う。
いつも守ってくれる、包んでくれる、助けてくれる、愛してくれる大きな手。
こんな風にこころが揺れてしまうのは、不安になることがあったからだろうか。
涼太が好きで、好きで、大好きだっていう気持ちだけで、もういっぱいいっぱいだ。
本当に安心、する……。
「みわ……アイツらと次いつ、会うんスか」
「次……?」
あいつら……って、タケさんやゼミのメンバーのこと、だよね……。
「夏休みだし……特に、会う予定はないよ。元々飲みに行くこと自体殆どないし、今回だって、教授が来るからって誘われただけなの」
「……教授が? あんなベロベロに酔ってたのに、なんにも言わなかったんスかね」
「あ……ううん、教授はまだいらっしゃってなかったの。ずっと待ってはいたんだけど……」
「ふーん……そう、なんスか」
そう言われて、また教授にお会い出来なかった事を思い出した。
忙しい先生だもの、きっと都合をつけるのが難しいんだろう。
少し様子を見て、諦めて早く帰っておくべきだったんだ。
「なんていうか、今後、どういう態度で接すればいいのか、ちょっと分からなくて……元々頻繁にお喋りをするような仲じゃなかったから、心配しすぎだとは思うんだけれどね」
事を荒立てたくないとわがままを言ったものの、じゃあどうなったら満足なのかと問われても、簡単には出てこなくて。