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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第82章 夢幻泡影


多分、体調が悪かったせいだろう。
こんな風に、途中目覚める事もなく爆睡してしまうなんて。
石のように重かった瞼は、一度開けてしまえば再び閉じたくなる事はなかった。

鉛を飲み込んだのかと思うほどの怠さがあった身体も、随分と元通りになった気がする。
これなら、涼太に心配かけずに見送ることができそうだ。

でも肝心の、涼太を……どうしよう。
すごく安らかな表情で寝息を立てている。
時刻は16時を過ぎたところ……今日は練習……行けなくなってしまったよね。

涼太は……どうして、こんなに優しくしてくれるんだろう。
彼から受ける愛情は、泣きたくなるほどあったかくて……。
いけない、感傷的になってしまった。
年々、涙脆くなっている気がする。

……違った。涼太に出逢ってから、感情を動かす事を覚えたんだ。
嬉しい、悲しい、悔しい、楽しい……言葉では表せない程の気持ちを、涼太から教えて貰って。
彼に教えて貰って、私は人間になれたんだ。

今ここにあるものに、当たり前のものなんてない。
感謝の気持ちは絶対に忘れちゃいけないんだ。

ありがとう、涼太。
今の私を取り巻く全てのものに、改めて感謝する。

あきに連絡はしてあったけど、その後お返事はあったかな。
鍵を新しくしてしまったから、中から開けないと家に入れないもの。

枕元にスマートフォンを置いておいて良かった。
メッセージアプリを確認すると、18時までには帰宅する旨の連絡が入っていた。

夕飯……食べて貰って、それで今日はお別れかな。
何にしよう。冷蔵庫、何が入って……

「っわ」

キッチンへ向かおうとした私の身体は、大きな腕に捕まった。

「どこ、行くんスか……」

後ろから突然抱き締められて、耳元で囁かれた気怠そうなその声に、ゾクゾクする。
寝惚けてるんだろうか、それとも起こしてしまった?

「あの、夕飯、何にしようかなって」

「まだ、行かないで欲しいんスけど……」

その甘ったるい声に、神経が溶かされてしまったみたいだ。
抵抗する事もできずに、お布団の中へと戻されてしまった。

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