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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第82章 夢幻泡影


「あきサン、早く帰って来るって言ってたっスよね」

「うん……大丈夫とは伝えたけど……」

「たまには甘えればいいじゃないスか」

たまには、って。
涼太があっさりとそう言うから、びっくりしてしまった。

もう本当に、ふたりには甘えてばっかりなのに……どれだけ優しいんだろうか。

「オレ、カギの業者に電話かけるっスわ。どこがいいとか、ある?」

「あっ、ううん、ないよ。待ってね、調べてみる……」

スマートフォンを開いて検索をしようとして、目に入ってきたのは小刻みに揺れる画面……自分の手が震えているのに気がついた。

「みわ」

大きな手が、私の手を包んだ。

「大丈夫だから。こんな時くらい頼ってくんないっスか」

……だから、どうして……。
だめだ、涙が出てきてしまいそうになる。

私は優しくされるばっかりで、迷惑かけるばっかりで。
なんにも、なんにも返せてないのに。

「横になってて。オレもその方が安心」

「……はい……」

怠い身体をお布団に預けて、視線を涼太に移す。
彼は早速業者を調べようと、スマートフォンとにらめっこしている。

その横顔が、逞しい腕が、大好きだ。
底抜けに優しいこのひとが、大好き。

この件は、鍵を取り替えて貰ってそれでもう終わりにしてしまいたい。
事を荒だてる必要はないもの。
体調もすぐ戻るだろうし、心配ないと思う。

それで、また涼太にはバスケに専念して貰おう……。

「……ねえ涼太、待って。私よりも、涼太が対応する方があまり良くない気がするんだけれど」

「ん? なんでっスか?」

「だって、あの黄瀬涼太が住んでいる! みたいに広められたら……」

「いや別にオレは困らないっスけど」

涼太は分かりやすく眉間に皺を寄せた。

「いや違うな。ヘンな噂になって、ここにヒトが集まるのは避けたいっスね……」

涼太はうーんと考えて、電話をかけだした。
どう、するんだろう……。
話の内容は、普通に鍵の付け替え依頼のようだけれど。

「あ、はい今からでも大丈夫っス。ちょっと買い物にも出ますけど、自分か妻のどちらかは居るようにするんで」

「ぶっ!」


つま!?

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