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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第82章 夢幻泡影


「どういう意味スか?」

「あの……目が覚めてね、なんか……ひとの気配がしたから、咄嗟にクロゼットに隠れたの」

こうやって説明すると、なんて馬鹿な事をしたんだろうと思っていたけれど……あの人間が涼太じゃなかったという事は、隠れて正解だったのかもしれない。

「そうしたら誰かが私の部屋を覗いて、その後すぐ玄関から出て行った音がしたんだけど……それは、涼太じゃなかったって、こと、だよね?」

「何それ、オレはそんなのしてないんスけど」

そうだよね、涼太だったとしたら、寝ている筈だった私が部屋からいなくなって、もっと家中を探す筈だ。
無言で家から出て行くなんて、それこそ不自然な話。

……考えれば考えるほど、指先からぞわぞわと嫌な感触が広がっていく。

「それ、オレが帰って来る前ってコトっスよね?」

「うん」

不謹慎だけど、涼太が居てくれて良かった。
不安でざらついた気持ちも、涼太の声を聞いてると少し落ち着いてくる。
ひとりだったら、パニックになっていただろう。

「……ちょっとあきサンにも連絡取ってみなきゃっスね」

「あ、私、するよ」

「オレかけるからみわは横になってて。後で代わってもらうから」

「……ごめんね……」

動揺しているのが伝わっているんだろう、涼太はぴしゃりとそう言って、私は大人しく布団へ戻った。
確かに、何から話していいのか……言葉が上手く出て行く気がしない。

横になる気にはなれずに、正座で彼の電話が終わるのを待つ。

「もしもしあきサン? 今いいスか」

この……家に、他人が入って……来た?

かつて、あの男に家を荒らされ様々な物を盗まれた記憶が蘇ってくる。

下着だけじゃなかった。ゴミとか……思い出しただけでも、全身に鳥肌が立つ。

「あきサン、ここに誰か来る予定とかあったっスか?」

何が、いけなかったんだろう。


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