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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第82章 夢幻泡影


ぜってー、許さねえ。

今すぐ叫び出したい衝動を押し殺して、細い肩を抱いた。

みわにスキがあったなんて、思ってない。
悪い奴はどこまでも狡猾で、純粋な人間を罪悪感もなく騙す。
みわは基本的には大人しいタイプだし、大きな声で主張するコではないから、狙われたんだろう。

みわはいつもよりもずっと青白い顔で、騒ぎにするのは避けたいと訴えた。
彼女が今まで遭ってきた事件を考えたら、当然だ。
オレだって、その気持ちを無視するようなコトはしたくない。

今、みわが警察に相談するのは避けたいと言うのなら、それを受け入れてあげるのが一番なんだと思う。

もし相談するとなったら、聴取や手続きをしなければならないのは、みわ自身だ。
手伝える事はあっても、代わってあげるのは不可能。
嫌な思いも沢山してきた彼女が避けたくなるのは、当然の事だと思う。

でもオレは、許さねえ。
みわを支えて出てきたあのオトコの顔だって忘れてない。
のうのうと生きているのが許せない。
みわに手を出して、タダで済むと思うなよ。

思い立って迎えに行って良かった。
あのままホテルや家に連れ込まれて居たのだと思うと、ゾッとするなんて表現じゃ表しきれない。

医師との話を終え会計を済ませてから、足元のおぼつかないみわを連れて車へ戻った。

小さな手は腿の上に拳を作ったままだ。
包み込むように自分の手を重ねる。冷たい。
なんて声をかけてあげるのがいいか、何度考えても答えは出なかった。

「ごめんね……涼太、大事な時間を。私、もう外でお酒を飲んだりしないから」

「……いや、悪いのはソイツだから。みわがそんな風に楽しめなくなるのは違うっスよ」

言葉にしなくても、みわから立ちのぼるような後悔の念を感じる。
きっと、あの日の全てを後悔しているに違いない。

……ぜってー、許さねえ。


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