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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第82章 夢幻泡影


「ちょっと電話一本、いいスか」

「うん……」

涼太は、ぽんと私の頭を撫でてから立ち上がり、スマートフォンを持ってキッチンへと向かった。

まさか、まさかそんな事。
気をつけていたつもりだったのに。
薬なんてそんなの、いつ入れられたんだろう。
いくら考えたって、記憶はトイレで途切れている。

涼太はどこかに電話をかけて、すぐに戻ってきた。

涼太は、病院って言ってた。
何科なのか分からないけれど、まだ朝早いからせめて9時くらいにならないとどこも開いてないだろう。

「みわ、行ける?」

「え?」

涼太は、座っている私に大きな手を差し伸べている。
行けるって、どこに?
また顔に出てしまっていたのか、涼太は続けて口を開いた。

「すぐに薬物検査して貰えるトコ、聞いたから」

薬物、検査。

自分の生活とはかけ離れた単語が飛び出してきて、それはうまく自分の脳みそに定着しない。

「……今、病院に電話したの?」

「いや、支援センターっていうのがあって、そこで今から受診出来る病院を調べて貰ったんスわ」

「支援、センター……」

なんの、支援……?

「そういう……犯罪とか被害に遭った時のための相談窓口なんだって」

「犯罪、被害……」

もう思った事が全部顔に出てしまっているんだろう、涼太はすぐに補足をしてくれた。

言い淀んだ涼太の様子から、分かる。
それはきっと、性犯罪、性被害のことだ。

「みわ」

涼太の優しい声はいつも通り、聞いているだけで幸せになるのに……手が、身体が、勝手に震える。

「なんで……私、飲みになんて行ったんだろう」

……気をつけているつもりだった。
でもきっと、私に隙があったんだ。

「みわ、みわは悪くないんスよ」

「私がもっとしっかりしていれば。涼太……ごめんなさい」

「みわ」

「病院……怖い……」

何を、どうやって検査するんだろう。
何を聞かれるんだろう。

「行きたく……ない」

嫌なことばかりがぐるぐると弧を描いて、胸のあたりが酷く気持ち悪い。


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