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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第82章 夢幻泡影


「……え?」

涼太の口から出て来た一文が、全く入ってこない。
もられた?
くすりを?

「な、なに……」

何を言っているのか、と問おうとした私の脳内に、ある声が再生された。

“デートレイプドラッグなんか日常茶飯事だ”
“トイレとかで席立ってる間に、残ってた飲み物にクスリ入れるんだよ。そんで、眠らせてレイプする”

どちらも、閑田さんが言っていた言葉だ。
ゾクリと背筋に冷たいものが走り抜けた。

途中から消えた記憶。
自分らしくない酩酊状態。
タケさんに支えられて店外に出ていた。

……私、お酒に薬を入れられたの?

動きの悪かった頭が、真っ白になっていく。
色のないパズルのピースが、ぐるぐると回っている。

「みわ」

「だ、いじょうぶ、落ち着いてるよ」

パニック状態になってはいない自覚がある。
考えたくないけれど、それなら全て説明がつくような状況なんだもの。

落ち着いている事を証明するために深呼吸をしようとしたのに、胸のずっと浅いところで止まってしまう。
もう一度、もう一度と思っているうちに、呼吸がどんどん浅くなっていく。

私、何をされた?
薬を盛られて?
それで?

思考が胸の奥の辺りで行き詰まったような感覚になって、酸素を取り込む量が激減する。
過呼吸の発作を起こした時の感覚に似てる。
だめだ。このまま続けてはだめ。
落ち着かなきゃ。

「大丈夫、ごめんね、大丈夫だから」

もう何が大丈夫なのか全く分からないのに、うわ言のように繰り返した。

「みわ」

「うん、ごめんなさい、私……」

「みわ、病院行こう」

「びょう……いん……?」

病院?
今度はその単語に驚いた。

「私、どこも悪い所なんて」

「ちゃんと調べてこよう。オレも行くから」

涼太のその真剣な声を聞いて、自分の中から浸みだして来た危機感が、もっと色濃いものになる。


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