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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第82章 夢幻泡影


「あの……ごめんね。昨日私、酔っ払っちゃったみたいで」

普段、こんな風に酔う事なんて絶対ないから、油断していたのかもしれない。
昨日はきっと飲みすぎてしまったんだろう。

「飲んだら電車乗るの辛いかなって思って迎えに行ったんスけど……行って良かったっスわ。あんなにベロベロになってるとは思わなかったから」

「えっ……あ、涼太、迎えに来てくれたの……?」

涼太が、迎えに来てくれたんだ。
彼の発言から、どうやら私は泥酔状態だったらしい。

「ぶ、寝たら忘れちゃったんスか?」

「……うん、忘れ、ちゃったみたい」

忘れる、という単語は、私の中で様々な意味を持つ。
どちらかと言えば、私は記憶力は良い方だ。
でも……精神的に脆い部分があるのは事実。
過去の記憶は、その殆どを失ってしまっている。

どちら、なんだろう。
本当に……人生初めての泥酔を経験して、ただ忘れてしまったんだろうか。

それとも、何か嫌な体験をした……?

「疲れてたんじゃないスか、またスケジュール詰めてやってんでしょ」

「うん……そうだね。そうかも」

やっぱり疲れが出て、いつもよりも酔いが回ってしまったんだろう。

「全然酔ってないって言いながら、車乗ったら瞬殺だったっスもんね」

え……私、涼太とお話したんだ。
ベロベロ、っていうくらいだから、もう寝ているような状況なのかと思ったのに……。

「みわ?」

「涼太、私とどこで会ったの?」

「え? 店の前。もう帰ったかと思ってメッセージ入れようと思ったら、みわが支えられながら店から出てくるトコで」

「支えられながら……」

ダメ、手がかりになりそうな事を聞いても、本当にピンとも来ない。

「誰だった? って聞いても分からないよね。……タケさん、かなぁ」

「お、それは覚えてるんスか」

「あ、ううん、ゼミの女の子から貰ったメッセージにそんなような事が書いてあったから」

「うん、ソイツ。すげえ親しげな感じだったけど黙らせた」

……涼太が表情も変えずにさらりとそんな事を言うから、それについては言及出来なかった。

やっぱり、タケさんだったんだ。
抜け出すのはお断りしたのに、どうして……?

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