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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第29章 事件


黄瀬くんが、何も言わず背中をさすってくれる。

「げほっ、げほっ、うえっ……」

苦しい。でももう吐けるものがない。
なのにえずいてしまう。最悪だ。
苦しくて涙がボロボロ流れてくる。

こんな醜いところ、見せたくない。

「けほっ…う…ごめん、なさい黄瀬く、も、大丈夫だから……見ないで……うっ……うぇっ!」

「みわっち、水持ってくるっス」

「ま、まって!」

「……え?」

「やだ、コップも触られたかもしれない……自分で水道まで行くから、大丈夫」

ふらつく身体を支えて貰いながら水道まで歩いていき、水を出したところで更に嫌な映像が頭をよぎった。

「水にも……何かされてるかも……」

そんな事、できるわけない。
大丈夫。大丈夫だ。
……でも怖い。何もかもが怖い。

黄瀬くんが水を止めて、カバンの中を探り出す。

「みわっち、オレのが嫌じゃなければこの水で口すすいで」

ミネラルウォーターのペットボトル。
まだ半分ほど残っている。

「ご、ごめんな、さい。ありがとう……」

ペットボトルを受け取り、口をすすいだ。

身体中の震えが止まらない。
またここにいたら、犯人が戻ってくるかもしれない。

「みわっち、しばらくオレの所においで」

黄瀬くんが優しい声でそう言ってくれた。

自分の家なのに、もはや落ち着ける場所ではない。

「うん……本当に、ごめんなさい……」

部屋に戻り、ボストンバッグに最低限の衣類を詰める。

下着は、持って行くことが出来なかった。
犯人が触れたであろう物に関しては、警察に提出したから。

どちらにしろ、もう気持ちが悪くて触れないし、履きたくもない。

後は勉強道具だけを詰め、ポストに入っている郵便物もとりあえずカバンに入れ、家を去った。

「必要な着替え、とりあえず買わなきゃっスね。あとは日用品か」

外を歩いている時も、周りが気になって仕方がない。

犯人が、どこかで見ているかもしれない。
どこかで狙っているかもしれない。
誰。誰なの。

荷物を置いて、衣類の量販店に向かう。

黄瀬くんがずっと肩を抱いてくれているから外を歩けるけど、1人ではとても外出できそうにない。

怖い。周りのひとが皆私の事を狙っているんじゃないか。

そんな妄想が頭をもたげる。



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