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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第82章 夢幻泡影


「お、神崎ちゃん、おかえり〜」

部屋へ戻ると、タケさんはまだ隣に座っていて、私の姿を確認すると大きく手を振った。

神崎ちゃんって……普段、神崎さんとしか呼ばないのに……どうしたんだろう。

「まだ飲むっしょ」

「あ……はい、飲もうかな」

せめて今日は皆と一緒に楽しく過ごさないと、申し訳ない気がして。

「どれにしようかな……」

メニューを見るものの、知らないお酒ばかりだからなかなか決まらない。
名前は聞いた事があっても、どんな味かを知らなかったり。
居酒屋によっては、カクテルメニューのところに何と何が入っていると書いてあるお店もあるけれど、ここは書いてないみたいだ。

「これ美味いよ」

「そうなんですか、じゃあこれにしようかな」

「すいませーん、チャイナ・ブルーひとつ」

タケさんがお勧めしてくれたのは、チャイナ・ブルーというお酒。
大好きなブルーの文字に、少しこころが弾む。

注文をして貰って、間も無く店員さんがお酒を持ってきてくれた。

「チャイナ・ブルーをご注文のお客様」

「はい、私です……っ!?」

手を挙げてグラスを受け取った瞬間に、異変を感じ取る。

内腿を這っているのは、大きな手。
タケさんが、こちらを覗き込みながら私に触れていると気がついて、突然の状況に、一瞬頭が真っ白になった。

「あ、あの」

「ほら、一旦酒は置いて」

腿に触れていた手が離れると同時に、お酒のグラスを取り上げられた。
タケさんは私に背中を向けて、テーブルへとお酒を置いたようだ。

そして何が起きているのかを把握出来ていないうちに、今度は突然視界が遮られた。

「ね……俺マジで神崎ちゃんと一緒にいんのが楽しくてさ……やっぱり抜けようよ」

抱き締められているのだと認識するのに、また少し時間を要した。

「す……すみません、お断り、します」

これはもう流石にもう誰かの助けを借りた方が良い。
タケさん、ひどく酔っ払ってしまったんだろう。


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