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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第82章 夢幻泡影


「のちほど……予定を、かくにんします……」

「ぶっ」

寝ぼけたのか、うわごとのようにそう言って、みわは寝息を立てだした。

寝ている彼女を見ているのが、好きだ。
オレにはこころを許してくれているのだと実感出来るから。

本当ならずっとこうして、隣に居たい。
それが出来ないのは、お互いが目標に向かっているからだ。
いつか笠松センパイに言われたように、お互いだけを見つめているのではなく、一緒に前を向いているから。

……今は国内だからいい。
どんなに離れていたと言っても、都市部にいる以上は数時間あれば会えるんだから。
でも、これが海の向こうになってしまったら?


“黄瀬くん、インカレの成績次第では向こうからお声がかかるかもよ”


向こうとはもちろん、海外のこと。
雑誌記者の戯言かもしれない。
でも、もしかしたら関係者がそう言っていたのを本当に聞いたのかも。
彼等のネットワークは侮れない。

……いくら考えても妄想の域を出ないというのに、気が付けば考えてしまっている。

青峰っちと桃っちは、どうやって決めたんだろうか。

自分の夢を捨ててオレについてきて欲しいなんて、言えるだろうか。
これだけ真っ直ぐに目標へと向かうみわに。

いや、考えるのはやめよう。
今はインカレ制覇に向けて全力を注ぐのみだ。

体調も含め調子は絶好調だし、チームの士気も上がってる。
今年はいける、そう思う。

「なぁんでこんなに、惚れちまったんスかねえ……」

髪に、唇に触れても、ぴくりともしない。

真っ白のシーツの上に寝ている彼女は、まるで息をしていないかのようだ。
無意識に手のひらで呼気を確認して、安堵のため息をついた。

何やってんだと自分にツッコミを入れてから、横に寝転んでゆっくりと瞼を下ろした。


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