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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第82章 夢幻泡影


「海外にも行きたいっスね」

「海外……旅行?」

頭にパッと浮かんだのは、ヤシの木の下でフラダンスを踊る女のひと……。
なんて貧相な頭の中なんだろうと、自分で驚いた。

「そうそう。卒業旅行は海外に行かないっスか」

「私……海外旅行なんて、したことないよ」

「オレもそんなにないっスわ。ヨーロッパはまだ行ったコトないし。みわも、どっか行きたい候補あったら言ってね」

「行きたい……所……うん、分かった」

海外旅行。
国内ですらまだ行ったことのない県があるというのに……。

でもなんだか、ワクワクする。
海外なら、国内にいる時みたいに隠れたり変装したりする事なく、涼太もストレスを感じずにいられるだろうか。

……さつきちゃんは、青峰さんについて行くと決めた時、どんな気持ちだったんだろう。

詳しくは聞いてないけれど、自分の生活拠点を変えるというのは、並大抵のものではないはずだから。

そして、それよりも何よりも、卒業旅行という単語に驚いた。
そうだよね、もう2年生なんだもの。
これから皆、就職先を決めて、将来を決めて……きっと、あっという間だろう。

なんだか女子高生だったのが随分前のように感じる。
一日一日が濃すぎて、早すぎて。

今までの事を思い浮かべているうちに、なんだか身体がぽかぽかしだした。
飲んでいるお茶の効果だろうか。
体重が急激に増えて、ソファに沈み込んでいく錯覚に陥る。

「……みわ?」

「……涼太、ごめんなさい……眠く、なってきちゃったみたいで……」

自分から、涼太とお話ししたいとあれだけ言ったのに。
なんでだろう、とっても眠い……。

手に持っていたカップは涼太が受け取ってくれて、支えられながらベッドへと向かう。

「なんだか急に……眠気が……」

「みわは寝不足なんだから、たまにはゆっくり寝るといいんスよ。起きたらまた、話そ」

「あり、がとう……」

涼太のこの、囁くような低めの声が大好きだ……。
とろりと溶けたチョコレートのような液体が、意識の上に被さっていくような感じになって……そのまま、眠ってしまった。



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