第82章 夢幻泡影
自分で言っておいて、変な意味ってなんだろうと思う。
よく使われるけれど、意味がはっきりしない言葉って結構多い。
……どうして私は、混乱すると思考がおかしな方向へ走り出してしまうんだろうか。
「変な意味って、なんスか?」
涼太は口の端を緩めて、笑いながらそう聞いた。
今まさに、自分で突っ込んでいたことだ。
「あの……自分でもよくわからなくて……」
正直にそう言ったら、今度はこらえることなく吹き出した。
「みわはウソをつくコトを知らないんスかね」
少し呆れた?ような声を出した唇は……そのまま、私のそれと重なった。
……涼太の唇って、どうしてこんなに柔らかいんだろう。
頬を撫でる指が、ひびの入ったガラスに触れるかのような優しさで。
「まぁた押し倒しそうになったっスわ」
ぺろりと舌を出すいたずらっ子な表情も、私を抱いてくれる時の色っぽい表情も。
この気持ちを的確に表現できる言葉が見つからない。
「涼太……好き……」
「そんな可愛いコトを言うのは、どのお口っスか」
広がった距離が、また一瞬で縮まる。
会話はなくても、絡み合う唇や舌が、彼の気持ちを伝えてくれているみたいだ。
このまま身を委ねてしまいたくなった……と思ったら、唾液が変な所に入ってしまって、思いっきり咳き込んでしまった。
「大丈夫っスか、みわ」
「けほっ、ご、ごめんなさい」
「ごめんはこっちのセリフ。お茶淹れるっスわ」
大きな手は背中を撫でてくれて、ポットにお湯を注ぎ出した。
……また、流れを台無しにしちゃった……。
この緊張感のなさ、どうにかならないんだろうか。
「少し蒸らすんスね……んじゃその間に、マテ茶をベースに緑茶、シナモン、ジンジャーをブレンド……オレはこれにしよ」
うなだれる私を慰めるかのように、レモングラスの爽やかな香りが鼻腔を擽った。