第82章 夢幻泡影
「ちょっと仕切り直し……しよ」
優しい声はそう告げて、繋がったまま私の身体をころんと転がした。
あっと言う間に、うつぶせで腰を上げた体勢にされて、さっきより更に奥まで彼が入ってくる。
「う……あ」
私が、後ろから挿入される体位も出来るようになってから、する頻度が多くなってきた気がするんだけれど……
「……涼太……、この体勢、気持ち、いい……?」
涼太が気持ちいいなら、いいんだけれど。
なんか、自分から見えない所を全部見られているのが恥ずかしくて、布団に埋まりたくなってしまう。
「っあうぅ……」
後ろから強く抱き締められて、胸を弄られながら一番奥を刺激されると、自分でも聞いた事のない、声じゃないような声が出てしまうのも、恥ずかしすぎて。
「んー……確かにめっちゃ気持ちいーんスけど……みわがお尻振ってくれんのがカワイイんスよね」
「おっ、おし!?」
「ほら」
「あっ!」
今度は陰核も弄られて、下半身が揺れた。
ねだっているように思われてしまうだろうか、彼の目には下品に映ってしまっているのだろうか、そんな心配事が去来するのに、止められない。
「んはぁ、っあ」
「……怖くは、ないんスか」
耳元で囁かれる声は、どこまでも柔らかくて。
もう、怖くなんかない。
このひとと過ごす時間は、幸せだらけだ。
交わし合う熱が、身体中を熱くする。
「怖く……ないよ。涼太とこうしてるの、すごく幸せ……」
溶け合う身体の温度に、心のあったかさに、目頭が熱くなる。
『もしこの世を離れる事になったら、海常の体育館で待ち合わせ』
死が二人を分かつ事になっても、その先の約束がある。
"未来"を持たなかった私にとって、それは"キセキ"なんて言葉では到底表しきれない。
このひとがくれる全てのものを受け取って、このひとに全てお返ししたい。